Melody Honey
不敵とも言えるくらいの挑発的な笑みだった。

誰かをこんなにも怖いと思ったのは、今日が初めてかも知れない。

「忘れるんじゃねーぞ」

最後にそう言うと、桐生は部屋を後にした。

ドアが閉まった瞬間、ガクンと私は膝から崩れ落ちた。

「――何なのよ…」

呟いたとたん、私の躰に急に震えが起こった。

脅すような声と挑発的な笑みが、頭から離れることができない。

まるで私を支配しているかのようだ。

「――最悪…」

呟いても、震えは一向に止まる気配を見せなかった。

震えを止まらせるように、私は自分で自分の躰を抱きしめた。
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