Melody Honey
「触れないって言う訳には行かねーな」

詩音の指に感じて、私の唇から甘い声がこぼれ落ちた。

彼が触れるその指先に溶けて消えてしまいそうだと、私は思った。

「――詩音…」

名前を呼んだ私に、
「それくらい、わかってる」

呟くように、詩音が言った。

「積極的過ぎるんだよ、お前は」

目があったのと同時に、詩音にそんなことを言われた。

「それでも、いいけどな」

「――んっ、詩音…」

意識が遠くなって行くその瞬間、詩音が余裕の笑みを浮かべた。
< 270 / 288 >

この作品をシェア

pagetop