サイレントナイト~赤くて静かな夜~

岡嶋社長

「おはよう、宗ちゃん」

就業時間の8時半。
オカジマが一階の工場におりると、いつものように八丁堀が工場の掃除をしていた。

「おはようちょーさん。今日も早いね」

バブル期には十数人いた工員は、今や最年長の八丁堀とオカジマの二人だけになっていた。

「宗ちゃん、なんだか朝からそわそわしてどうしたの」

八丁堀は深いシワの刻まれた優しそうな顔をオカジマにむけた。

「やめてよちょーさん。
いつも通りだよ」

「そうかい。
私は宗ちゃんは生まれた時から知ってるからね、お父さんみたいなもん。つっぱってたってわかっちゃうよ」

「参るよ」

オカジマは苦笑いして頭をかいた。

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