ほどよい愛
恭汰は壁に私を押しつけると、一瞬顔を上げて私の目を見た。
さっきまでとは違う切ない表情で私をきつく睨み付けるように

「…辛かったに決まってるだろ」

そう言って、私の残りの服を乱暴に脱がせて、ベッドへと押し倒した。

「恭汰…」

初めて感じる恭汰の切ない気持ち。

その原因は、私。

唇に感じる熱い感情から逃げずに。

抱き締められる腕の強さ以上の強さで抱き締め返して。

せめて、今までもらった愛情の何分の一かでも返そうと…。

恭汰からしか教えてもらった事のない愛し方で、自分の気持ちをこめて応えた。

前から気付いていた自分の気持ち。

いつか悲しい別れがくるかもしれないけれど…。
もう私の全てで恭汰を愛してしまった…。

怖がらずに逃げずに…その現実を受け入れたい。

その晩は、何度も何度も啼いて、愛して愛された。


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