ほどよい愛
葵の隣りに腰掛けて、そっと肩を抱くと。当たり前のように頭を俺の肩に預ける葵の仕草にぐっとくる。

今まではためらいながら固い仕草で寄せてきていた彼女の心のガードは、もうないように思える。

「葵…。びっくりするとは思うけど、俺達には幸せな奇跡だと思うから心配するな」

「…。恭汰も透も、自分達だけで納得してて私一人混乱してる。はっきりと全部教えてよ」

「わかってるから。とりあえず、会社に行こう。車に乗って行けよ?周りにばれたくないからって一人で電車で行くな。俺達の事がばれるのも時間の問題だ」

少し強い口調で言い聞かせると、不満気な表情をした葵も、渋々頷いた。

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