ほどよい愛
会議室には我が社の設計部の10名と、住宅の建設に携わる
「KH建設」の人が10人ほどが部屋に散らばって、それぞれ話をしていた。
コンペ参加から協力してもらっていたせいか、既に気心は知れている。
今日は、今後の建築日程などの確認。
今から、図面の上にしかなかった家が、どんどん実際の物になっていくのだ。

わくわくする。

ロの字型に並べられた机の端に資料やらを置いて一息つくと、そこにファイルが並べられた。視線を上げると恭汰と目が合った。

「助かりました」
「いや」

素っ気なく言う私を気にしていないようなくちぶりに少しむっとしていると、

「姫!」

と呼ぶ声が。

なに?と見回すとテーブルの向こう側からやって来る男性が目に入る。

「慎也…?」

「やっぱり姫じゃん!お前相変わらずきれいだなあ」

「…そりゃどうも。慎也も相変わらず格好いいよ。王子」

「くっ。今聞いても笑えるな。俺が王子だもんな」

「それは私もだよ。姫なんて、柄じゃないもん」

「いやいや、姫は姫だよ。何年たっても、俺には姫だよ。なんていったって高校時代自慢の彼女だし、な」

「うふふ」

軽くおだてる慎也。高校時代の同級生。
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