ほどよい愛
入社三年目の私、仁科葵は、設計担当としてこのプロジェクトに参加している。発足から3か月。残業は当たり前、泊まりになる事もしばしば。
まだまだ若いから大丈夫だと思っていた体力にも少々自信を失いつつある。

「仁科、これ人数分コピー頼む」
「11時の打ち合わせ用ですか?」
「ああ。忙しいのに悪い」

図面を受け取り、視線を上げると、すでに相模課長は自分の席へ向かっていて、途中何人かに声をかけられていた。

相模恭汰。30歳。
入社二年目で、設計に携わる者なら誰もが欲しいと願う「設計デザインコンクール」で大賞をとり、その出品作品の質の高さと24歳という若さで、当時の業界の話題となった。
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