ほどよい愛
「だめです。絶対に返してもらわないと」

模型の前にしゃがみこんでつぶやく。

「これは、すごく大切なんです。絶対に返してもらって下さい」

「仁科さん…。そんな必死にならなくても…」

「…すみません。でも…なくなると困る」

頬を熱いものがつたう。
…私、泣いてる?

「泣くことないでしょ」

背中をぽんぽんとしてくれる今村さんに申し訳なく思いながらも涙が流れてくる。

「仁科さんがこの模型気に入ってるから、最後にじっくり見せてやってくれって相模くんに言われたんだけど…」

困ったなぁと笑う今村さんは、模型を両手で抱えながら、空いている会議室へ向かった。
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