先生×自分
お笑いのコントのように要と美依が話していた。

「要兄、お嫁さんいらないの?」

「いらねぇ。南とラブラブしてりゃあ…」

「しないし」

全く…
でも、大好きな時間。
こんなのにも面白い時間なんて、もうない気がする。

海に着くと、要と美依は、はしゃいでバシャバシャと水をかけあっていた。

自分と溝川は、大きな岩に座っていた。

「宮沢さん、あいつが嫌なら僕の所においでよ」

「…は?」

「吉田先生、もう無理じゃないかな?君を傷つけたのに追ってもこない」

…何かあったのかな?携帯を見た。電話もメールもなかった。

「今日は、一度着替えでも持って、ウチにおいでよ」

…甘えていいかな。今日は、一緒にいたくないから。

「…すみません。ありがとうございます」

迷惑ばかりかけてしまうね。
でも、今日だけ甘えさせてもらおう。

溝川は、自分の手を握ってきた。
溝川を見上げると、とても優しい顔をしていた。

今までに見たことのない表情だった。

「お母さん~」

美依が自分を呼んだ。

立ち上がって行こうとすると、耳元で囁かれた。

「…まだ好きだから」
…とんでもない選択をしたのかも。
溝川を見ると、ニヤリとしていた。

やっぱり、苦手だ。
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