向日葵の下で
■入院患者

事故

ある夜のことだった。



その日私はたまたま夜勤で職場である大型病院のナースステーションでカルテの整理をしていた。



私が看護師になったのは4年前のことだ。

かねてからの夢であった看護師の資格を手にしたとき、私はほとんど無意識にガッツポーズをしていた記憶がある。


しかし、元々ドジな私は看護師に成り立ての頃、随分周りに迷惑をかけてしまっていた。

ちょっとしたミスもしょっちゅうやらかしたし、対処の仕様がわからずオロオロするなんてこともあった。

それでもめげずに頑張ってきたかいもあったのか、最近ではそういうことも少なくなってきた。

少なくなってきただけであって、ゼロではないのだけれど・・・。



自分ではちゃんとわかっているのだ。

私たち病院に勤めている人間は些細なミスでも許されない、許してはいけない。

しかし不慣れというのは予想以上に表に出てしまうものだった。

幸い命に関わる場面でのミスはしていない。

というより、命に関わる場面に直接関与したことがないのだ。

例えば事故だとかがあったとき、重体の患者さんは先輩のベテラン看護師が応急処置をして、私は軽傷もしくは重傷の患者さんを手当てする。


しかし患者さんの死ならこの4年で何度も見てきた。

重体の患者さんの中には助からない人も多い。別の患者さんの手当てをしている時に隣で・・・ということも少なくない。


私はいまだにそういう状況に慣れないでいる。

人が目の前で亡くなった時に、何ともいえない喪失感、虚しさ、悲しさが胸に濁流のように流れ込んでくる。

そして無意識に自分が死ぬ時はどんな時なのかを想像する、きまってその時は気分が暗く沈むのだ。


とりあえず私は事故死だけは嫌だと思った。
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