初愛
あと一枚。それを脱がせば陽は全裸を現わす。しかし、時は残酷にもやってくる。

「ヒロミ〜。」

陽は真哉が来る時は、鍵を開けっ放しにする。今回は碧の仕業だが、真哉は当たり前の様に陽の寝室に来る。

「まだ寝てんのか〜…。」

逃げ場の無い碧。陽のベッドの中で寝たふりをすることにした。恋人なら怒るだろうと試してもいた。

「珍しいな…俺が来る時は酔って寝てる事はないのに。」

碧は薄目を開けてみる。見た目中々、センス良し、だが男とも女とも見える感じだ。髭が無ければ、男とは判りにくい。

「…別れたと聞いていたが、仲直りしたのか?」

真哉はぶつぶつと独り言を言い続けている。冷蔵庫を開けたり、ほぼ裸の陽を見つめたりしている。

「…おかしいな。ヒロミらしくない。…さてどうするかな。」

真哉の独り言は一々碧を緊張させた。碧が恋人なら、そう悪い事ではないのだが。真哉のそれは碧のした事に、気付いているような素振りをするのだ。

「…まぁいいよな、ヒロミ。」

最後の独り言に碧はほっと安堵した。安心した碧はもう一度、薄目を開けた。真哉の行動を見ていたかった。監視を含めて。

目に真哉の手が映った。それがどういう事なのか、すぐには解らなかった。

「えっ………。」

碧は声を出してしまった。

しかし、真哉気付かない。それもそうだ、真哉は陽を抱き抱えている。
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