『契約』恋愛

side:/ KAZAHARU


『契約』最後の日の今日、朝早い屋上に、俺は雪乃を呼び出した。
…――もちろん、俺の気持ちを伝えるために。

とは言っても、約束の時間までにはまだ少し早い。夏とはいえ涼しげな風が吹く屋上、透き通るような青い空を見上げて、俺は1人小さく息を吐いた。

少しばかり高鳴る鼓動、俺には珍しく緊張なんてものをして。でもその中で、きっと雪乃も喜んでくれる、この関係はこのまま続く、なんて、妙な自信と期待が膨らむ。

長いようで短かった一ヶ月。
最初雪乃に恋愛感情なんて無く、他の女と同じ、ただの遊びにすぎなかった。
でもいつの間にか、気づいたら好きで。初めての気持ちに戸惑って、不安になったりもして…。

傷つけて、泣かせたときもあった。終わりに直面して、終わりたくないと切に願った。

あの気持ちはもう、味わいたくない。だから今こそ正直に、素直に、雪乃と向き合うと決めたんだ。
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