『契約』恋愛

でも俺、何でこんなにムキになってんだ?
女なら他にもいるのに。
手に入れにくいものほどほしいってのは、こういうことなのかもしれない。


「そっか!なら契約成立ってことで。一ヶ月間よろしくね、佐山君。」


そう言って青木は、さっきとは打って変わった笑顔で俺に笑いかけてきた。
…青木って意外と可愛かったんだな。なんて、ガラにもないことを思った自分自身を、思わず自嘲した。

でもそんなことより、俺、ちょっと思うんだけど…。つき合ってるのに名字に君付けなんてどこか他人行儀じゃね?


「あぁ。こっちこそよろしくな、雪乃。」


だから俺は名前で呼ばせてもらうことにするよ。早速な。

一瞬戸惑ったような顔を見せる雪乃にほほえめば、数秒後、ぎこちない笑みが俺を見返した。
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