『契約』恋愛

重苦しい雰囲気が、体中にまとわりつく。


「雪乃のこと、もうどうでもいいの?」


ゆっくりと紡がれた言葉。
そして、おそらく俺に向けられているのであろう中沢の視線。それを確かめることなく、俺は前の一点だけをひたすら見つめて。

ただ問いかけられることに、耳を傾ける。


「3日も学校休んでるのに、気にもならないの?」


…――気にならないわけがねぇ。


「佐山君は雪乃を好きだったわけじゃないの?」


…――好き、だったんだよ。


「やっぱり雪乃のことも遊びだったの?」


…――遊びじゃねぇから、こんな思いしてんだろ。


「…何で、別れちゃったのよ!」


…――そんなの、雪乃に聞けよ。
俺だって別れたくなんてなかったのに。
< 197 / 286 >

この作品をシェア

pagetop