『契約』恋愛

side:/ KAZAHARU


「…もう、秋なんだね。」


静かな、二人っきりの病室。
涼しげな風が吹く窓の向こうを見ながら、雪乃はそう呟いた。


「だな。寒くなるけど、風邪なんて引くなよ。」

「はは、わかってる。風春もね。」


苦笑いを浮かべてそう返す雪乃は、明らかに以前よりも痩せた。元々細身で華奢な体だったけど、ここ数日で、さらにもっと…

弱々しくなった体に、弱まる体の抵抗力。
雪乃は笑ってるけど、実際風邪なんてひいたら命取りだ。


「それよりさ…」

「あ?」


俺が雪乃の体調に思考を巡らせていることを知ってか知らずか、雪乃は楽しそうに話を続ける。意識を戻して耳を傾けた俺に、雪乃は何かを思い出すように問いかけた。


「ねぇ、風春知ってる?」
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