きみと、もう一度


 鏡に写る、中学生最後のわたし。


 今日、わたしはどう過ごせばいいのかを目の前のわたしに問いかける。

 なにも変わらない一日を過ごした場合、どうなるのだろう。一度過ごした五年間と、同じ日々が待っているのかもしれない。けれど、変わったこともたくさんある。少しずつ違う新しい日々が新たに出来上がっていくのかもしれない。

 変えたいと思う。

 セイちゃんとの関係をどうにか修復したいと思う。できることなら、仲直りして、卒業したい。今坂くんとも、いい関係で終わりたい。

 けれど。


――『どうなるのかわからない』

――『今は無理でも、数年後には』

――『なにもしなまま諦めてどうすんの』


 公園で聞いた、幸登の台詞が頭の中から聞こえてくる。わかってるよ幸登。せっかくのチャンスを手にしているのだから、行動するべきだ。でも、怖いんだ。

 もしも変わってしまったら、今ここにいるわたしはどうなるんだろう。わたしは、変わってしまうのかもしれない。今までの数年で変わったように。


 悩んでいたって時間はすぎる。

 はあーっと息を吐きだして、コートとカバンを手にとった。卒業式に遅刻するわけにはいかない。きっと今日もセイちゃんは家にこない。


 そう、思っていたけれど――ピンポーン、といつもの時間にいつものチャイムが鳴り響く。
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