きみと、もう一度



 家に帰ると、すぐに着替えてベッドに横になった。

 ……なんだかすごく、疲れた。ゆっくりと朝から今まで休みなくランニングでもしていたみたいに体が重い。

冷たい体を温めるように布団をかぶると、あっという間に微睡む。


 なにをするにもみんなと一緒だった。こんなにずっと一緒に行動していたんだっけ、と思うほどひとりになる時間がない。無理をしてグループになっている、というわけじゃなく、ただ、一緒にいると楽しいからそばにいる、という感じだ。

 歳を重ねると、人とかを決めることは滅多にない。みんなそれぞれ自分に合ったものを見つけ出さなくちゃいけなくなる。

選択授業から始まり、志望大学と学部。そこからだって授業を自分で選び、なんとか将来を見つけ出さなくてはと就職活動も始まる。

そういった選択を迫られるたびに、自分と他人は別の人間で、個々でしっかりと自立しなければいけないのだと成長していくのかもしれない。


 もちろん二十歳ではまだその途中だ。成長したってなにもかもがうまくいくわけじゃないし、後悔だってたくさんする。一五歳にくらべたら二十歳は大人だけれど、当時思っていたほどは大人じゃない。


 けれど当時はもう少ししっかりしていると思っていた一五歳は、思っていたよりも子供だったのかもしれない、と思う。


 一日を、一瞬を、見えるものを、全力で受け止めて過ごしていた。

 未来を思い描いで落ち込むこともなく、過去にとらわれることもなく。

 電車で高校生や中学生を見て『元気だなあ』と思ったけれど、それは体が、ではなく精神的なものだったのかもしれない。


 なんで、わたしはここにいるんだろう。


 疲れるのは二十歳のわたしだから。でも、存在するのは一五歳のわたし。
 どっちが本物なのだろう。幸登と付き合っていたわたしは、どこに行ったのだろう。


 ――「確か……最後彼が事故に遭うんだっけ?」
 ――「なにそれ! そんなラストだったら泣く!」


 ふと思い出した朝の会話。たしか、最終回は今日だった。

 もしも、あのラストが本当だったら、わたしの過ごしたと思っている五年間は本物、ということになるんじゃないだろうか。

まだ、放送されていない最終回の映像を、わたしは覚えている。

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