きみと、もう一度

「あ、おかえりー」

 今日に限って姉は一日家にいたらしく、帰って来たわたしにソファーに座っていた体を起こして振り返る。どうだった、なにがあった、と聞きたくてうずうずしているのが緩んだ口元から見て取れる。

「んー……服ありがとう……」

 今は姉の期待する言葉も言えないし、言えない理由を説明するのも億劫でそれだけを言って部屋に戻った。「えー」と不満そうな叫びが聞こえてくる。

 ベッドにダイブしたい衝動を堪えて、まずは借りた衣装を脱いできれいにたたんでから、どさりと仰向けに倒れこんだ。

 後半は一体を話したのか思い出せない。ただひたすら口を動かしていただけだった。今坂くんがどんな返事をしていたか、どんな顔をして聞いていたかもわからない。

 なんだったんだろう、今日は。

 昨日の夜はあんなに浮かれていたのに、夢みたいだ。

 ごろんと寝返りを打って布団に冷たくなった顔を押し付ける。
 


 セイちゃんは今日、わたしと今坂くんが出かけるだろうことを知っていた。

 ――『明日でもいいよ』

 昨日、電話でそういったセイちゃんは、わたしにどんな返事を期待したのだろう。

 わたしはなにかを、間違えているんじゃないか。そんな悪い予感が渦巻いて、胸騒ぎが止まらない。頭の中ではずっと、セイちゃんが涙で顔をぐちゃぐちゃにして、わたしを見ていた。
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