十五の妄影(もうえい)
しばらく手探りで這っているうちに、目もだんだん暗闇に慣れてきた。

…ぼんやりと視界に浮かび上がってくる光景。

ただひたすらに暗い空間。

広大な地平線の夜、と表現すればいいだろうか。

何もない、果てしない暗闇だけが広がる世界。

それが妄影の体内…言い換えれば晋作君の精神世界だった。

「……」

震えが来た。

まず感じたのは、言い知れない不安。

そして孤独。

この世界に自分しかいないのではないかという、追い詰められるような感覚。

圧倒的な、孤立…。

訳もなく自分の体を抱きしめ、身を固くする。

こんな精神世界ってあるの…?

何の色も、何の光も、何の心象風景すら存在しない、完全なる無。

限りのない、闇…。

それが、今の晋作君の精神世界だった。

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