手紙


その映画はケータイ小説をもとにしてつくられた恋愛ものだった。

最後のシーンでほろりと涙が頬を伝った。

ふと隣にいる翼くんを見ると、その視線に気付いてくれて、優しく微笑んでくれた。

それを見て、ちょっぴり照れた。


映画館を出ると、二人組のカップルが目の前を通った。

その女の顔を、あたしは知っている。


「……なんで」


――許せない。


次の瞬間、あたしはその思いのままに走り出していた。

女の肩をつかんで振り向かせた。


「は!?なに……!?」

「准(じゅん)」

「……花垣葵……?」
< 84 / 300 >

この作品をシェア

pagetop