碧の記憶、光る闇
『はあ…まあ、そんな所です』

別に正直に言う必要も無いのだが、後で再び遭遇するような事になれば何を言われるか分からない。

『金沢も女に不自由はしないだろ?何もあんな女なんかにしなくても』

あんな女と言われて雅彦はピクリと眉を動かした。

『ねえ、あんな女ってなあに?この恰好良い先生の彼女ってそんなにブサイクなの?』

連れの女が甘ったるい声を出す。

『ブスじゃないよ美人は美人なんだけど…俺が思うにあの女絶対に整形してるぞ。俺には分かるんだ、こう目のあたりがな、何て言うか…』

『失礼します』

これ以上居合わせたら暴力をふるってしまいかねない自分を止める自信が無くなり、雅彦は一礼してその場を離れた。
話の腰を折られた増田が何やら言っているが耳に入らない。

(何が整形だよ、ふざけやがって…例えそうだったとしても何なんだよ)

怒りを静める様に二三度深呼吸した雅彦はベンチにたたずむ碧の姿を見て足を早めた。
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