____苺の季節____

月夜の戸惑い

「はい、15分休憩入ります…、次、【H】から通していくからね」

村井先輩のタクトが、カンカンと軽い音を立てた。
ふーっと息を吐き、緊張を解く。

合宿も3日目を迎え疲れが出てきたかな。

あたし達は、7泊8日、ある田舎町の青少年会館に合宿をする為にやって来た。

仲間達と寝食を共にし、朝から晩までステージ演奏とマーチングの練習をする。

壁には分刻みのスケジュール表が貼られ、それを眺めながらようやく3日目に突入したな…と思っていた矢先、誰かがあたしの頭を紙の筒で叩いた。


「おい、杏…、もうへばったか?背中がギブアップって言ってるぞ」

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