____苺の季節____
島ちゃんも、一緒に入部出来れば良かったけど……、それは無理だった。


それぞれの人生だもの、本当にやりたいものと向き合ってくれるなら良いと思うんだ。


新しい何かに希望を持って挑戦するのは、大歓迎だし、応援したい。


入学2日目、部活発表会の時から、島ちゃんは「バドミントン部に入りたい」と言っていた。


「吹奏楽は向かないみたい」

申し訳なさそうに、島ちゃんはあたしの目を見つめる。


「なんも良いんだよ、島ちゃんの好きなこと、やりたいことやった方が良いに決まってる、

気にしないで、

かえって何だか悪いじゃない、

羽球面白そうじゃん、

かっこいい、応援するよ」

笑顔できちんと想いを伝えた。


中学校の時、転入してきた島ちゃんを吹奏楽部に誘ったのはあたし。


小学生の時、金管バンドでトランペットを吹いていた経験があるらしくて、誘ったんだ。


入部後もトランペットパートに入る事が出来たし、

一緒に楽しく、仲良くやってきた。

でも、演奏が得意じゃなくて、躓いていたのも知ってる。


頑張ってる島ちゃんに刺激されて、あたしも家で秘密の個人練習したんだよ?


夏の野球応援、お祭りのパレード、地方公共団体の色々な催しでの演奏、


コンクール、中学校吹奏楽連盟の演奏会、


本当に楽しくて、大きな賞を取って、代表になった時は、手を取り合い、おいおいと嬉し泣きしたっけ。


トロンボーンとトランペットは、ステージ上で横に並ぶ事が多く、

2人ともファーストだったから(楽器パート内でも、編曲上、1st2nd,3rd,4th等譜面が異なり、ハーモニーやリズムを作る)

いつも隣に座り、

ベル(楽器のラッパ状に広がった先の部分)を並べて、いろんな曲を心を合わせて演奏してきた。


ベルに反射する夏の太陽、
ステージの照明、

島ちゃんが吹く、トランペットの音色……。

あたし、忘れないから。

大丈夫。


あたしは、あたしで音楽やるから、


島ちゃんはバドミントン頑張って!


あたしは、瞼の奥で、

白いシャトルを打つ華麗な姿と、爽やかな笑顔を想った。





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