山賊眼鏡餅。
■第3章

山賊のお仕事

Tシャツにショートパンツ。

蒸し暑いので、まとめ髪だ。

突然会いに行くのだから、特別に可愛くして行きたい。



登山口から山に入ると、少し涼しくなったが、やはり暑いのには変わり無い。


頂上の神社の奥から、茂みの中に入って進むと、ハジメの家がある。



「こんにちは!」

古びたドアに向かって呼び掛ける。



反応は無い。


ハジメの家は呼び鈴が無い。

一人で来てみて、初めて気付いた。

エコなのか、何なのか知らないけれど、この家には、あって当たり前の設備が無いことが多い。

電気、ガス、電子レンジ、冷蔵庫、それに呼び鈴。



ドアを思いっきり強くノックしてみる。

と、

何の抵抗もなく、ドアに大きなひびが入った。



「わっ」

叫んだときには、ドアは木っ端微塵だった。

木っ端微塵というものを初めて見た。

まさに文字通りだ。



思っていたよりも扉の板が薄かったのと、腐りかけていたのが、きっと原因だ。

逃げ出したい気持ちだ。

でも、このまま逃げたら、ただの嫌がらせの器物破損ストーカーだ。

ドアを壊したことを正直に伝えて謝るのが、ベストだと思った。
< 107 / 324 >

この作品をシェア

pagetop