山賊眼鏡餅。
緑色の葉をつけた背の高い木の並木道を歩いて、平田の家へ向かった。

大きな家ばかりある町だ。

私の住む町とは全然違う。

平田は、趣味の悪いオレンジ色の瓦屋根の家の前で立ち止まった。

少し古い感じの大きな家だ。
妙に背の高い門に、2台のドイツ車が停まった車庫。

表札には『平田』と書いてある。


平田は、ポケットからグッチのキーケースを取り出して、玄関の鍵を開けた。


「どうぞ」

どことなく誇らしげに平田が言った。




広い玄関で靴を脱ぎ、2階の自室に通された。


14畳くらいありそうな広い部屋だった。

うちのリビングよりも広いかもしれない。

趣味の悪い赤いソファに、大きめのデスクとチェア、大きな本棚、ラブリーなシーツのかかったベッドが置いてある。

それぞれ高そうな家具だが、なんとなく統一感が無くてセンスが無いような感じがする。

ハムスターの籠は、デスクの上に乗っている。


平田は不器用にハムスターを巾着袋から出して、籠に移した。


「用意してくるから、ちょっと待ってて下さい」

平田はそう言って部屋を出て行った。



冷たい麦茶と水羊羹でも出してくれるのだろうか。

期待に胸が高鳴る。
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