山賊眼鏡餅。

山嵐

セミの鳴き声で目が覚めた。

朝。

青い空に白い雲。




時計の針は9時10分を指している。



少し遅いが、許せる範囲だ。

100点満点をあげたいくらいの朝だ。



それなのに、私は浮かない気分だった。



もちろん、昨日の目黒さんのことが原因だ。


ハム研が、ばらばらになってしまう。

みんなで集まった時に、気まずい雰囲気になってしまうかもしれない。


顔を洗って、テレビをつけて、トーストを食べながら、ぼーっとしていると、電話がかかってきた。


犬のおまわりさんの着信メロディだ。

ハム研メンバーからの電話だ。


液晶画面を見ると、目黒さんの名前が表示されていた。


いったい何の用だろう。



「もしもし」


『ミチコ先輩。朝からすいません!』


「どうしたの?」


『今日のお昼暇ですか?』


「うん。暇だけど」


『金髪女に話を聞きに行くことになったんですけど、ミチコ先輩も一緒にどうですか』


「あの、足を骨折して合宿に欠席したっていう山嵐さん?」


『そうです。山嵐ノゾミです』


「なんで急に?」


『山嵐は、リス研の内部に詳しいらしくて、リスの報復事件に興味を持ってくれて……って、沼袋部長が言っていました』


「へえ」


『犯人探しに協力してくれるそうです』


「すごい!」


『12時半に、お昼ご飯持参で、ハム研部室に集合なので、よろしくおねがいします』


「了解」


通話終了ボタンを押す。




いつもの目黒さんだ。


あんなことがあった翌日なのに、普通すぎる。



なんという図太さだ。
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