山賊眼鏡餅。
沼袋部長が襲われた。


いろいろなことが心配になって、私は、また眠れない夜を過ごした。


早朝、平田から電話がかかってきた。


『ミチコさん!大変です!』


「沼袋部長のこと?」


『え。知ってるんですか!?』


「いろいろあって……」


『まあ、ともかく、沼袋部長がママの病院に運ばれてきたんですよ』


「そうなんだ」


『けっこうやばいですよ』


「どんな?」


『血とか出てて……』


「そう……」


『死ぬような怪我じゃないってママは言ってましたけど、結構な怪我みたいです』


「死なないんだ。良かった……」


『昼くらいに、お見舞いに行きましょうよ』


「うん」


『ミチコさん、いつになくしおらしくないですか?』


「こんなときに不謹慎かもしれないけど、リスの報復事件の犯人探しをしていたから、犯人にやられたのかなって思って……」


『そんな……!?』


「私も狙われたらどうしよう」


『ミチコさんらしくないですよ』


「そうかな」


『ミチコさんは、もっと能天気で愉快なおちゃらけキャラでいてくれないと』


平田は、人を見る目が無いのではないかと、前々から思っていたが、やっぱり思った通りだ。

私は、決してそんなキャラじゃなかったはずだ。


でも、そんな、ちょっぴりいろいろなことを勘違いしている平田を微笑ましく思った。


「なんか元気でたよ。ありがとう」


『いやいや、元気出してる場合じゃないですよ。部長が重態なんですから!』


「そうだったね……」


『お見舞いに行きましょう。2時に病室集合!』


「あ、うん」


『じゃ、またあとで!』



平田はそう言うと電話を切った。




< 172 / 324 >

この作品をシェア

pagetop