山賊眼鏡餅。

消えた吉川ヨシオ

一週間が経過した。


沼袋部長の怪我は大分良くなり、橋本ミミはハム研の集まりにまた遊びに来るようになった。

ウルフは復活してバイトに精を出している。

平田も目黒さんも元気だ。

真帆だけが、落ち込んだままだった。


吉川ヨシオが戻らないのだ。


私には、どうすることもできなかった。


オード卵は一連の事件の犯人だった。


しかし、吉川ヨシオには全く関係していない。


あの後、念を入れて、ハジメがオード卵に数々の拷問をしたので、それは間違いないだろう。

オード卵は、爪をはがされかけたり、水に沈められたりと、散々だったらしい。


近々樹海に捨てに行くということで、私と平田は、オード卵に最後の挨拶をするために山に向かっていた。


「山賊もかなか残酷なことしますね」

アイスバーを舌先でちょろちょろと舐めながら、平田が言う。


「樹海に捨てるのは可哀相……かなあ」


「そうですよ。いくら何でもひどすぎます」


「ハジメに頼んで、捨てないようにしてもらおうか」

「是非そうしてもらいたいですね」


山に登り、頂上の神社の奥の茂みに入って行く。

平田は、なんだか嬉しそうだった。


「そういえばさ、平田」

私は言った。


「なんですか」


「財布、貰えるんでしょ」


「ああ。犯人を見つけた人に財布をあげる約束をしていましたね」


「良かった。覚えてたんだ」


「あたりまえですよ。今度持っていきます」


ハジメの家のドアは、すっかり新しくなっていた。


前回より、かなり厚みのある木材を使っている。


安心してノックすることができた。


玄関に迎え出てくれたのは、ハジメのお母さんだった。
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