光を背負う、僕ら。―第1楽章―

変わっていくもの

「…な。佐奈ってば。」





誰かがあたしの体を揺すりながら、あたしを呼んでいる。




「起きなさい、佐奈。」




そう、はっきりと聞こえた。



この声は……お母さん?




ぼーっとする頭でそんなことを考えながら、あたしは気怠い上半身を起こした。




「佐奈ったら、こんなところで居眠りしちゃダメじゃない。寝るなら、ちゃんとベッドで寝なさい。」





…居眠り?




そう言われてあたしは塞がってくる瞼を手でゴシゴシと擦り、辺りを見渡す。



あたしが今いるのは、勉強机のイスの上。




あたし、いつの間にか寝ちゃってたんだ…。




時計を見ると、針は5時過ぎという時刻を示している。



部屋に入ってくる光は夕方独特のオレンジがかった光で、部屋の中までオレンジ色に染まっていた。




「佐奈、寝るのはいいけど、塾の宿題はしてあるの?」



「…してあるよ。」





また、塾の話…。




口を開けば塾と言うお母さんの話は、最近は少し聞き飽きてきた。



あたしがいつものように軽く返事をすると、お母さんはまたいつものように口うるさくなる。





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