光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「みんな幼いわね。佐奈もなんだか小さく見えるわ。」




ガミガミとあたしに言いつけていたお母さんとは、なんだか別人に見えた。



今のお母さんは、“母親”って感じの顔をしている。



だけど進路の話をする時のお母さんは、“母親”じゃない。



子供の意見など聞かず、ただ自分の言うなりにしたい“大人”だ。




いつだって今みたいに、“母親”って感じがするお母さんだったらいいのに…。



一緒にピアノを弾いていた、あの頃のお母さんみたいに――。






「あっ、夕飯の仕度しなくちゃ。」




お母さんはアルバムを見終わると、見ていたアルバムを閉じてあたしに渡してきた。



あたしはそれを無言で受け取る。




「佐奈もご飯が出来たら、下に降りてくるのよ?早く夕飯食べないと、塾に遅れるからね。」




あっ、今。



“母親”から“大人”に切り換えられた。





あたしは何も言わず、ただ頷いた。




お母さんはそんなあたしを見たのか見てないのかわからないけど、そう言ったきり黙って部屋を出ていった。




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