光を背負う、僕ら。―第1楽章―
二人が握手を交わした時、また小さく拍手が起こる。




「あなた、本当にいいピアノの演奏だったわ。つい聞き惚れてしまったもの。」



「あっ、ありがとうございます。」




東條学園の先生に褒められて、小春ちゃんは本当に嬉しそうに微笑んだ。




「せっかくだから、名前を教えてもらってもいいかしら?」



「あっ、はい。広町(ひろまち)中学校から来ました、戸沢小春です。」



「…戸沢…?」




滝川先生が何かに気付いたよう眉毛をピクリと動かして、小春ちゃんの名字を復唱した。



それと同時に、周りの人達も重大なことに気付いたらしい。



ハッと目を見開いたり、口を空けて驚いたままの人がいたりする。



やがてその人達は、何かのスイッチが入ったように口々に喋り始めた。



そして次第に部屋の中が、どっと騒がしくなった。




「ねぇ、戸沢って。」



「そうそう、あれだよね?有名なピアニストと同じ名字だよね。」



「えっ!?うそっ。まさかもしかしてあの子…。」




次第に人の話し声は、ピークを迎えてさらに騒がしくなった。





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