光を背負う、僕ら。―第1楽章―
ドキ…ドキ…ドキ……




もう演奏は終わったというのに、心臓はまだ緊張している。



でも、あたしの気持ちは違っていた。



演奏を始める前は不安と緊張でいっぱいで、ピアノを弾くということに余裕がなかった。



だけど今は、楽しさと喜びが胸の中に溢れている。




……そう、楽しかったの。



学校や家とは違う、すごく良いピアノを弾けたこと。


しかもそのピアノを使って、久しぶり“月の光”を弾けたこと。


そして最高の場所で、最高の音楽家を目指す人達と、一緒に演奏出来たこと。



どれもがすごく新鮮で、貴重な体験だった。



そんな体験を出来てあたしは今、最高に気持ちが高ぶっていたんだ。




「あなた、すごくいいピアノを弾くのね!」




声に気付いて振り向くと、ちょうど滝川先生が拍手をしながら近付いてくるところだった。




「ありがとうございます!」




ずっと座っていたイスから腰を上げた。



そして感謝の気持ちを精一杯伝えるつもりで、深々と頭を下げて礼を言った。





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