光を背負う、僕ら。―第1楽章―



「…せっ、先生!! いきなりそんな所に立ってたら、驚くじゃないですか!!」



あたしと同じように振り向いた明日美が、心底驚いた表情で言った。



その場にいた他の子達も、いきなり登場した鈴木先生にかなり驚いているみたいだった。



「…それにしても先生、いつの間に音楽室に入ってきたんですか?」



一番疑問に思っていたことを尋ねた。



さっき音楽室の出入り口であるドアを見た時は、誰の姿もなかった。



先生は、いつ入ってきたんだろう?



まさか、あたし達が気付かないようなスピードで入ってきたとか?



少し現実離れしたことを考え出した時、鈴木先生が尤もな答えを言った。



「ずっとここにいたのよ」



鈴木先生はそう言って、自分の背後にあるドアを指差した。



「そのドアって、音楽準備室に繋がるドアですよね?」


「そう。 私、ずっとここにいたの」



…そっか、納得。



さっき聞こえたドアが開く音は、そのドアが開いた音だったんだ。



……って、あれ?



先生さっき、ずっと準備室にいたって言っていたよね?



つまり、あたしの演奏も聞かれていたってことなの?



< 73 / 546 >

この作品をシェア

pagetop