執事とお嬢様、それから私


こんなことは日常茶飯事だ。

たまのデートもここぞってとこで『お嬢様』から電話がかかってくる。

わかってた…わかってて、好きになった。


でも、やっぱりツラい。



日本随一の大富豪である西園寺家の一人娘の執事。



その仕事をわかってあげたフリがしたくて、なきながら笑顔で電話にでる私。


今、彼が私でない女と一緒にいる事実。

私よりずっとずっと彼に近い『お嬢様』。

でも

16歳の『お嬢様』に負けたくないだけだって、わかってる。


醜い嫉妬に見て見ない振りをしてるだけ…



そんな事を考えながらシャワーを浴びていたら鼻の奥がツンとしたのを感じて私はシャワーの水流を強くした。


泣きたくない。


「意地っ張りね…」


呟いた声は水と一緒に排水溝に吸い込まれていった。

< 3 / 81 >

この作品をシェア

pagetop