倒錯夜話(センチメンタルナイトホラー)
急にまわりの景色が揺れ、真昼は床に倒れた。

「おい!」

ケンが声をかけると、真昼を時々電信柱の上から見ていた裸の男が出てきた。

「手を貸せ。」

ケンの命令で、そいつは黒い豹になると、気を失った真昼を背中に乗せて、屋敷の地下室に降り、真昼を床に降ろした。

そこには細長いストレッチャー程の幅の寝台があり、サテンの緑の布に、金の縁取りがある布の上に、今度はケンが真昼を抱き上げて載せた。

部屋の壁際の香炉に香木をくべて火をつけると、やがて部屋は強い香りと煙に包まれた。

ケンは真昼の頭上にある壁に、持ってきた巻物を拡げて飾った。

それは、血の池地獄や針山も描いた、閻魔の絵であった。

閻魔の瞳がやがて火のように燃え始めた頃、ケンが呪文を唱え始めた。

すると、真昼の腹がへこんだと思うと、真昼の口から餓鬼が一匹出て、絵の中に入って行った。

その時、閻魔の手が動き、その餓鬼はぐしゃっと潰された。

絵が何もなかったように戻ると、ケンは絵をまたしまいに行った。

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