春夏秋冬～それは奇跡の幸せ

紅く染まった夕暮れを見て一番重要な場所を思い出した。
急がなければならない理由はないのだが、熱く火照った心が足早にさせる。
全力で走る僕の足はあの時よりもフラフラしていた。
でも、急がなきゃ。
そんな一心で重たい足を交互に前へと進める。


海岸に着いた時、背筋に電気が走った。
いつも彼女が座る位置に女の人が座っており、僕が座っていた位置にハートが描かれていた。
「神谷 沙季(かみや さき)さん？」
高鳴る鼓動が胸を締めつける。
振り返った女性は僕の会ったことのある彼女の面影を残して大人っぽくなっていた。
「もしかして…海藤 大和君？」
名前を呼ばれた瞬間、何かが弾ける音と共に彼女へ駆け寄った。
彼女も同じく駆け寄り、二人の影は激しく重なる。


話によれば僕らは今までに会ったことがなく、同じ夢の中でそれぞれの想いを巡らせていた。
そして、彼女が去った理由は『運命ならもう一度会える。』というものだった。


それから三年後、奇跡の再会を果たした僕らは夫婦の誓いを契った。
最高の幸せを手にした僕はこう思う、人間とは奇跡を信じて闇を進めばいつか必ず光を見いだせる生き物なのだと。