*桃色キス*短編
「「…あの」」

そう言ったのは二人同時だった。

「先いいよ」

「ぇ…」

かああ!と顔が熱くなって、"やっぱりなんにもない"と言おうするとー、郁斗君の後ろから柚の姿が見えた。

口をパクパク動かしている。

よく口の動きを見るとー

"が ん ば っ て"

そう言ってくれているように見えた。

柚はあたしと目が合うと笑って拳を突き上げた。

昔から、柚はあたしにエールを送る時、ああやって拳を突き上げて応援してくれていた。

そう言えば柚はよくこう言って応援してくれたっけ…

"当たって砕けても死なないからッ勇気だして"


柚に頷いてからあたしは郁斗君に目を合わせ、ゆっくり口を開いた。

どうか…

あなたの心に届きますように……。


「好き」



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