ジェネシス(創世記)
バースディー・ワイン
「あなたの民は私の民。あなたの神は私の神(ルツ記)」

 モブという町に、「オウミ」という老婆が住んでいた。二人の息子は他界していたので、二人の嫁オルとツルには実家へ帰るようにと説得していた。

孫は一人もいなかった。けれどもツルだけは、心優しく本当の母親のように慕っていた。姑のオウミのそばから、離れることはなかった。ツルは、アブーの甥ロトの子孫だった。

 嫁と姑という陰湿な関係は、二人にはなかった。例えケンカしても、すぐ仲直りをしていた。ツルはそんな年老いた姑を一人残して、この家から去るには心苦しかったのであろう。

「あなたのそばを離れるようなことをしたなら、主よ、どうか私を幾重にも罰して下さい(ルツ記)」

 この時代になっても、女性に対する教育はおろそかにされていた。必要性がなかった。学校に入学できるのは、常に男性だけだった。

それでもオウミは、幼少の時から独学で知性と教養を身につけていた。親の目を盗んでは、聖書や学術書を読みあさっていた。学問に富んだそんなオウミから、ツルはいろんなことを学んだ。学びたかったらしい。

 秋、オウミは故郷のベツレヘムの町で、ツルと一緒に移り住んだ。けれども、まともな仕事がない。司祭者たちは、戦場で死んで行った兵士の遺族のために、「落ち穂拾い」の仕事を与えていた。

穀物を刈り入れた後、未亡人や経済的に苦慮している人達のために、落ち穂を拾わせて「給与」を与える福祉政策だった。

 領主ズボアは、大勢の未亡人や子供たちを雇用していた。二人も落ち穂を拾っては、生計を立てていた。落ち穂で芋を焼くと、香ばしく美味しかった。

落ち穂は、冬に備えての家畜のエサにもなった。生ゴミと一緒にすると、堆肥にもなった。有効なリサイクルだった。

 領主ズボアは、オウミの亡き夫の遠い親類であった。オウミの取り計らいでツルは、ズボアと結婚することになった。ズボアの祖先は、ユダ士族である。

「あなたは、家を絶やさぬ責任のある方です(ツル記)」
 
< 117 / 375 >

この作品をシェア

pagetop