蝶々結び
一瞬、何が起こったのかわからなかった。


上杉先生の顔がゆっくりと近付いて来たかと思うと、甘い匂いがあたしの鼻をくすぐった。


そして、今…


あたしの唇は、上杉先生の唇に塞がれている。


呆然としたままのあたしからゆっくりと唇を離した先生は、どこか楽しそうに笑った。


「……っ!?」


やっと状況を把握出来たあたしは、顔が熱くなっていくのがわかった。


一人でパニックになってアタフタしていると、上杉先生が意地悪な笑みを浮かべた。


「次は、目閉じろよ?」


ニッと笑った先生が勝ち誇ったような表情をしているのが、すごく悔しい。


それなのに…


あたしの心臓は、上杉先生にも聞こえているんじゃないかと思うくらいドキドキしていた。


あまりにも驚いたせいか、いつの間にかあたしの涙は止まっていた。


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