ぼくの太陽 きみの星
「……母さんがどこにいるのかは知らない」



そっけなくそう言い捨てて。


手の中のマグカップの中身をじっと見つめていた鷹耶は、独り言のようにつぶやいた。



「未怜は、お父さんといい思い出がいっぱいあっていいね。


……オレは正直、自分が母さんに会いたいのかどうかすら、よくわからないよ。


だから、”探そう”なんて積極的な気持ちにはなれない」



「……」



(鷹耶……)



うす暗いリビングに重い沈黙が落ちる。





ふと気付いた。



自分を捨てたお母さんの話をするときだけ、鷹耶は固い、能面みたいな表情になる。



いつもの軽口や余裕な態度、意地悪がなりをひそめて。
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