ぼくの太陽 きみの星
(鷹耶……いない。よかった)


ほっとする。

このタイミングで顔を合わせたくなかったから。



誰もいない暗い家に帰ると、ほてった体を熱めのシャワーで汗を一気に流した。

気持ちいい。



誰もいないと思って、ラフな部屋着でシャワーから出ると。

鷹耶がリビングのソファに長い足を組んで腰掛けて、何かの雑誌をぱらぱらと見ていた。



(げ……帰ってる)



さりげなく横を通り過ぎて、さっさと自分の部屋に上がろうとした。


と、鷹耶は本に目を落としたまま、何げない口調で言った。


「あいつとやったの」

「…………」


勝手に足が止まる。


止まるな、歩け、あたし。


「…………毎回同じこと聞かないでよ」


答えるな、あたし。
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