ネコ専務シリーズ2
少年は大きな扉の前で立ち止まった。
いつもはきちんと閉まっているドアが
少し開いている。

四歳になるシュウは、息をひそめて細い
隙間から中を覗いた。父親譲りの黒い
瞳は好奇心でキラキラ輝き、小さな胸は
冒険への期待で高鳴っている。

いつも父親から入ってはいけないと言わ
れているセトナおじさんの部屋。

「いいか、シュウ。セトナおじさんは
 何をしているか分からない、腹黒くて
 怖い人なんだ。

 部屋に入ったら大変な事になるから
 絶対に入っちゃ駄目だぞ」

その脅しは逆にシュウの好奇心を刺激
した。あの優しいセトナおじさんのどこ
が怖いのか知りたい。

父親の目を盗んで何度か侵入にチャレン
ジしたが、いつも鍵が掛かっていた。
でも今日は開いている。

このチャンスを逃す手はない。シュウは
キョロキョロと辺りを確認し、静かに
扉を開いて中に入った。
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