COLORS【青】パープルA ─螺旋の選択─
数日後。

「お姉ちゃん~!」
どこかで聞いたあることある声がする。

「葵君!」
『パープルA』に彼がやってきたのだった。

「よぅ!チビ、何か用か?」

「チビとは何だ!お前なんかに用はないんだよ~だ」
あっかんべーをする子供の仕草は、見る人にとってはかわいく写ったりもするのだが。

「こ、このヤロウ~っ!」
廉には通じなかったようだ。

「まぁまぁ……ところで今日はどうしたの?」
小さい子相手に大人げないんだから。

「お姉ちゃんとデートしようと思って来たんだ。結局、海でのお礼もまだできずにいるしさ」

「なに~!デートだとっ!許さん!絶対に許さんぞ!いいか、こっちはお前みたいに暇じゃねぇんだ!帰れ!」

「……妬いているだ、お兄さん」

「ばっ、ばかなことを言うじゃない!誰がヤキモチなんか」

「じゃあさ、僕が大きくなったらお姉ちゃんと結婚してもいいんだ」
こんなセリフがさらっと言えるのも子供の特権なのかもしれない。
ちょっとだけ羨ましい。

「けっ結婚!?何だよ、それ。つーか、随分話がぶっ飛んでないか?」

「う~ん、葵君が大きくなったらもう一度言ってとは言ったけどなぁ」

「……ったく、今時のガキは──って、藍?」
私は着けていたエプロンを外すと、作業台の上に置いた。

「気が変わったわ。あとはよろしく!さぁ!葵君、行きましょう!」

「おい!ちょっと待て!!この膨大な量の配達を俺一人でやれと?」
分厚い伝票をちらつかせながら彼は焦り始めた。

「そういうことになるわね。頑張ってね~!」



「「藍のバカやろう~っっ!!」」



皆様ご存じの『パープルA』からはいつまでも廉の言葉が響いていた。



END
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