%コード・イエロー%

それじゃね、と挨拶すると里佳子は足早に去っていった。

その背中が楽しく弾んでいる。

一緒に食事ができないのは寂しいが、

その浮き立っている背を見ると、なんだか私まで楽しくなって笑みがこぼれた。


「さて、私も帰るか」


つぶやいた独り言が、夜風にさらわれる。

電車の中では、カップルばかりが目に付いた。


そりゃあ、そうだろう。

よく考えれば、今日は金曜日で、明日からは連休なのだ。

客商売の仕事でない会社員やOLにとって、まっすぐ家に帰る理由もない。


彼氏がほしくないわけでもないし、結婚願望がないわけでもない。

ただなんとなく、家に一人でいるのも嫌いじゃないし、

彼氏がほしいと、がっついた姿を見せるのも、微妙にプライドが許さない。


ただの、言い訳。



・・家に帰って、ドラマでも見ながら甘いものでも食べよう。



まさか、そんなささやかな願いさえかなえることができないなんて、

このときは、思ってもみなかった。




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