%コード・イエロー%

それは、10月半ばのこと。

突然冬が押し寄せたみたいに北風の強い夕方だった。


「あの、もう一度おっしゃってください」


狭い病院の会議室で、私は自分の所属する派遣会社の上司から言い渡された言葉が理解できず、聞き返した。

窓の外に梢が当たっているのだろう。

がたがたという音が静かな部屋に反響する。


私の斜め向かいに腰をおろした彼は、派遣会社の支社に勤務している正社員の男性で、私より二つ年下だ。

この病院の担当になってから、まだ半年。

だから、ショックを受けるよりも何よりも、何かの手違いだろうと思った。

だが、彼はなんでもないことのように、淡々と続けた。


「ですから、あなたの勤務態度に問題があるということで、

こちらの病院からひきあげることになったんです。

明日から、もうこちらへは来なくていいですから」


書類に目を落としたまま、彼は当然でしょうという風に高圧的な態度をとった。


「あの、待ってください。勤務態度に問題って。

一体何が問題なんですか!」


がたん、と窓から大きな音がしたかと思うとふいに響くような音がやんだ。

うっすらと見えていた影がなくなっている。

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