雲間のレゾンデートル
上を向いて歩こう、涙がこぼれないようにって訳じゃなく
 家とは反対方向に曲がったあたしはぼんやりとそんな事を考えながら繁華街を抜けて国道沿いの大きな道を歩いていた。


 別にどこか行きたいってのはないけど今は何となく家に帰りたくないだけ。

 なんとなくあても無くブラブラ歩きたい気分だったから。


 その気分に従って歩いてはいるもののなかなか気分は晴れない。

 心は鉛色で重いまま。


 俯いて溜息なんて吐いちゃったりしたらそのまま沈み込んじゃいそう。

 それが嫌であたしは無理やり空を仰いで息を吐いた。

 きっと冬なら白い息が綺麗に風に乗っていくのだろうけど生憎今は9月の終わり。

 ダラダラ続く夏となかなか来ない秋の間みたいな時期で吐いた溜息は目に見えないまま排ガスの溶け込んだ空に混じって消えてった。
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