雲間のレゾンデートル
レプリカント
「ただいまー」


 今時珍しい引き戸の玄関を開けて入ると帰ってくる挨拶はゼロ。

 その代わりにしん、と静まり返った空気があたしを出迎えた。


 大概誰かが出迎えてくれるからこの静けさは妙に新鮮。

 何かあったのかなぁと玄関から奥を覗いたけど相変わらず静かなままだ。


「んーなんか肩すかし」


 出迎えのない家に上がるのってなんか寂しいなぁ、なんて思ってると車を停めに行ってた隆ちゃんが戻ってきた。


 あたしに傘を貸して先に帰すもんだから隆ちゃんは軽く雨に濡れてる。

 駐車場から距離があるわけじゃないんだから一緒に帰ればいいのに。
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