飛べないカラスたち



ただ、クロウは力なく座るルックの手を引いてバイクに跨り、散歩をした。それだけしか出来なかった。


何か宛があったのかと言われれば、なかったと答えるしか出来なかった。子供が出来ることなんて、限られていたのだから。


それでも少しの力にはなったのだろう。


何度か繰り返すうちに、ルックは手を引かれなくても自らクロウの後ろを付いて歩いた。


バイクの排気音が削除音をかき消してくれていたのだろう。


結局、投薬治療を行なって徐々に治り、今ではもうすっかり完治している。ルックが夜目覚めることもなくなった。



「いいじゃないですか、子守の練習になったでしょう?いいパパになりますよ、クロウ」



「いらねぇよ、んな練習」



不愉快そうに眉を寄せて、ルックが先ほど投げ出した資料を手にとってパラパラとその中の人間を確認する。


老若男女問わず、様々な人間が、カメラに向かって真面目そうな視線を投げかけている。


その中に、一際目立つ女がいた。海色の髪を長く伸ばした、妖艶な美しさを抱いた女。


微かに瞳孔が開く。


心臓が脈打ち、随分と昔に消し去った遠い日の記憶を、硬く閉じ込めたはずの記憶を、思い出させる。


一人の写真を見つめたまま動かないクロウに、いぶかしんだ様子でレイヴンがクロウの手元の紙を覗き込む。


それと同時に、バサッと紙を一つにまとめると机の上に放って、クロウは立ち上がると大きく伸びをした。



「あー腹減った」



言いながら冷蔵庫を開けて取り出すビールの缶に、レイヴンは眉を寄せて窘める。




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