飛べないカラスたち
「小僧も共犯か…」
老人は、杖に掛けていた体重を解くと、杖を持ち上げた。
それは杖ではなく、研ぎ澄まされた重々しい、斧。
リクとセイの心臓を破壊したのだろう、赤黒い汚れと、砂と埃で汚れた斧。
長く使われていたのだろう、木の柄が少し廃れているのが遠くからでも見て取れた。
ふと脳裏を過ぎる都市伝説のような話。『カラス』という、唯一人間を殺すことを許された人間。
思わず頭を抱えて、身を縮込ませる。
斧が風を切る、そんな音が恐ろしく近い距離で響いた頃。
「待て、そいつは殺すな!」
何処からか、鋭い声が聞こえ、斧は止まった。
チリチリと痛む気配にルックが目を開いてみると、目の前10cmほどに斧の刃が鈍い光を放っていた。
その後の記憶は、ない。ルックは何故殺されなかったのか、自分自身さえもよくはわからない。
ただ心の中で誰かを呼んだ。
それは兄だったのか、母親だったのか、リクとセイだったのか、覚えていない。
そのときの記憶はそこから途切れ、目覚めるとベッドに縛られており、自分の体内には妙な物質が入れられている違和感を感じ、背中には激しい痛みがなかなか消えなかった。