カラス
後日談
 結局、向こうに帰る電車の時間も聞けず、見送りにも行けなかった。
 それから、数週間が経って一通のメールが来た。
 差出人は宮口さんからだった。


“ありがとう。好きでした”


 その二言が僕には凄く辛かった。
 あの時、何故自分から言えなかったのだろう。
 どうしてこう、間が悪いのだろう……と。

 あの出来事がきっかけで僕はアルバイトを始めた。
 土日だけなのだけど、一日、土木工事現場の周辺で警備員をやっている。
「新人! 熱心だな。寒い中、良く頑張ってるな!」
 珍しくバイト先の棟梁がコーヒーをくれた。
「夏に、会いに行かないといけない人がいるので」
「彼女かい? 熱々だねぇっ!」
 棟梁は「がははは」と笑いながら僕の背中をバシバシ叩く。
 僕はただ、あの時のことが忘れられないだけで。

 だから、夏休みに彼女に会いに行くんだ。



 今度は僕が気持ちを伝える番だから。
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